3月18日 精霊の日
萩原朔太郎『猫町 散文詩風な小説』
私は今もなお固く心に信じている。あの裏日本の伝説が口碑している特殊な部落。猫の精霊ばかりの住んでる町が、確かに宇宙の或る何所かに、必らず実在しているにちがいないということを。
— 青空文庫 (@aozora__bunko) March 17, 2021
『猫町 散文詩風な小説』萩原朔太郎#精霊の日 #青空文庫
坂口安吾『愉しい夢の中にて』
「河田の幽霊か」と私は言つた。
— 青空文庫 (@aozora__bunko) March 17, 2021
すると河田は、あの男の独特な苦笑とも哄笑ともつかない複雑な又可憐な笑ひを浮べて、
「人ぎきの悪いことを言つてくれるな。僕は精霊ぢやよ」と答へた。いかにもあの男の言ひさうなことである。
『愉しい夢の中にて』坂口安吾#精霊の日 #青空文庫
豊島与志雄『少年文学私見』
既に童話に於ても、現在では、妖精や精霊などは死んでしまった。王子や王女なども放逐された。動物たちも殆んど口を利かなくなった。そしてただ子供たちの日常生活のさまざまな様相が、いろいろな香気を立ててるだけのことが多い。
— 青空文庫 (@aozora__bunko) March 18, 2021
『少年文学私見』豊島与志雄#精霊の日 #青空文庫
芥川龍之介『魔術』
ジンなどという精霊があると思ったのは、もう何百年も昔のことです。アラビヤ夜話の時代のこととでも言いましょうか。私がハッサン・カンから学んだ魔術は、あなたでも使おうと思えば使えますよ。高が進歩した催眠術に過ぎないのですから。
— 青空文庫 (@aozora__bunko) March 18, 2021
『魔術』芥川龍之介#精霊の日 #青空文庫
久生十蘭『生霊』
「でも、あなたの兄さんは戦死なすったのでしょう」
— 青空文庫 (@aozora__bunko) March 18, 2021
「ええ、ですから、兄のお精霊になって……」
「僕が……幽霊になるのですか」
「いえ、幽霊ってわけではありませんの。普通にしていてくだすって結構なんですわ」
『生霊』久生十蘭#精霊の日 #青空文庫
3月19日 聖ヨセフの日
バルザック『ゴリオ爺さん』(中島英之訳)
その時だった、まるで大工の聖ヨセフが出す掛け声にも似た大きな溜息が聞こえた。それは夜の静けさを破り、死にかけている人間のような苦しげな喘ぎを若者の胸に響かせるのだった。
— 青空文庫 (@aozora__bunko) March 18, 2021
『ゴリオ爺さん(Le Pere Goriot)』バルザック(Honore de Balzac)中島英之訳#聖ヨセフの日 #青空文庫
3月19日 ミュージックの日
海野十三『十八時の音楽浴』
博士の音楽浴の偉力によって、当国は完全に治まっている。音楽浴を終ると、誰も彼も生れかわったようになる。誰も彼も、同一の国家観念に燃え、同一の熱心さで職務にはげむようになる。彼等はすべて余の思いどおりになる。
— 青空文庫 (@aozora__bunko) March 18, 2021
『十八時の音楽浴』海野十三#ミュージックの日 #青空文庫